映画『IT/イット THE END“それ”が見えたら、終わり。』を押さえ初日ランキング1位(2019.9.13付 / Box Office Mojo調べ)を獲得、映画評論家からも絶賛の声を集め、アナリストたちの予想を大きく超え、興行収入100億円を突破する大ヒットを記録。本年度の映画賞レースにも予想を超える勢いでノミネートや受賞が続いており、アカデミー賞&ゴールデングローブ賞も有力視されている。
この映画は、2008年のリーマン・ショック後、急激に景気が悪化したニューヨークにて、ストリップクラブで働く4人のダンサーが中心となり、ウォール街の裕福な男たちから数年に渡って大金を巻き上げた、2013年に摘発された事件の実話に基づく。2013年から当事者や警察など関係者に取材を重ね、2015年に「NewYork Magazine」誌に掲載されたジェシカ・プレスラーによる記事“ザ・ハスラーズ・アット・スコア(原題:The Hustlers at Scores)” から着想を得て、製作された。
主演・製作総指揮は、女優としても活躍するラテンの歌姫ジェニファー・ロペスが務め、世界的に大ヒットした映画『クレイジー・リッチ』のコンスタンス・ウーがダブル主演。現在アメリカでブレイクしている人気女性ラッパーのカーディ・Bと、オリジナルの個性と存在感で高い人気を誇るシンガーでラッパーのリゾが、本作で映画女優デビューをしたことも話題となっている。ラッパーのアッシャーとGイージーもカメオ出演。ミュージックビデオさながらのスタイリッシュな映像、リアーナ、ジャネット・ジャクソン、リル・ウェイン、ブリトニー・スピアーズほか、2000年代前半のヒット曲やショークラブで定番のダンス・ナンバーがストーリーを彩る。脚本・監督・共同プロデューサーは、スティーヴ・カレルとキーラ・ナイトレイ主演による2012年の映画『エンド・オブ・ザ・ワールド』で映画監督デビューしたローリーン・スカファリア。女たちの女たちによる映画が完成した。
幼少の頃に母に捨てられ、祖母に育てられたデスティニー(コンスタンス・ウー)は、祖母を養うため、ストリップクラブで働き始める。そこでトップダンサーとして活躍するラモーナ(ジェニファー・ロペス)と出会い、協力し合うことで大金を稼ぐようになり、姉妹のように親しい関係になってゆく。ダンサー仲間のダイヤモンド(カーディー・B)からもストリップでの振る舞いをレクチャーされ、デスティニーは祖母とともに安定した生活ができるようになる。
しかし2008年、リーマン・ショックによる影響で世界経済は冷え込み、ストリップクラブで働くダンサーたちにも不況の打撃が押し寄せる。シングルマザーとしての生活費や、収監中の恋人の弁護士費用など、それぞれの差し迫った事情で“お金が必要”というストリッパーたちに、ラモーナは「真面目に働いても生活が苦しいのに、経済危機を引き起こした張本人であるウォール街の金融マンたちは、なぜ相変わらず豊かな暮らしをしているのか」と言い、ウォール街の裕福な男たちから金を騙し取る計画を企てる。
1978年5月1日、アメリカ、ニュージャージー州ホルムデルタウンシップ生まれ。スティーヴ・カレルとキーラ・ナイトレイ主演による2012年のロマンティック・コメディ『エンド・オブ・ザ・ワールド』で映画監督デビュー。そのほかの監督作はスーザン・サランドン、ローズ・バーン、J・K・シモンズが出演する映画『マダム・メドラー おせっかいは幸せの始まり』(15年)など。2020年には脚本を担当する映画『Soul(原題)』が公開予定。その他、映画『キミに逢えたら!』(08年)の脚本を担当、FoxのTVシリーズ「New Girl ~ダサかわ女子と三銃士」と「Ben & Kate」の監督・プロデューサーも務めている。また、映画『ランダム 存在の確率』(13年)には役者として出演。シンガーソングライターとしてドリュー・バリモア監督の映画『ローラーガールズ・ダイアリー』(09年)に楽曲提供するなど、幅広い分野で活躍している。
1967年7月16日、アメリカ、カリフォルニア州アーバイン生まれ。俳優、コメディアン、プロデューサー。ローカルケーブル番組でスポーツキャスターを務めたのち、演技とスタンダップコメディを学び始める。その後、人気テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」の出演でブレイクした。出演・製作したコメディ映画『パパVS新しいパパ』(15年)がヒットし、続編『パパVS新しいパパ2』(17年)が公開。大ヒットアニメ映画『LEGO®ムービー』(14年)、続編『レゴ® ムービー2』(19年)では声優を務めた。その他、映画『エルフ ~サンタの国からやってきた~』(03年)、『俺たちニュースキャスター』(04年)、『俺たちフィギュアスケーター』(07年)など出演多数。映画『プロデューサーズ』(05年)ではゴールデングローブ最優秀助演男優賞にノミネート、映画『主人公は僕だった』(06年)でもゴールデングローブ最優秀主演男優賞にノミネートされている。ジョージ・W・ブッシュを演じた単独舞台「You're Welcome America」(09年)でブロードウェイデビューし、トニー賞にノミネートされた。2007年には、動画サイトFunnyordie.comを設立。数百以上のセレブのコメディ映像を観ることができることから、すぐに大人気サイトとなった。またアダム・マッケイと共同で映像制作会社Gary Sanchez Productionsを設立し、映画『The Foot Fist Way(原題)』(06年)、『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』(08年)、『迷ディーラー!? ピンチの後にチャンスなし』(09年)などを制作している。
1968年4月17日、アメリカ、ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。映画監督、プロデューサー、脚本家。1995年にウィル・フェレルと同日に「サタデー・ナイト・ライブ」に初めて出演したことをきっかけに、それ以来、フェレルと映画『俺たちニュースキャスター』(04年)、『タラデガ・ナイト オーバルの狼』(06年)などの多くの作品でコラボレーションを続けてきた。2人は共同で映像制作会社Gary Sanchez Productionを立ち上げ、『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』(08年)、『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(10年)、『俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』(13年)の監督・脚本を務めている。またプロデューサーとして『ゲットハード/Get Hard』(15年)、『パパVS新しいパパ』(15年)、『パパVS新しいパパ2』(17年)など多くの作品を手がけている。2017年には、HBOのTVシリーズ「キング・オブ・メディア」で製作総指揮・監督を務め、本作で全米監督協会賞を受賞、脚本・監督・プロデューサーを務め、クリスチャン・ベイル、エイミー・アダムス、スティーヴ・カレル、タイラー・ペリーが出演している映画『バイス』(18年)では、アカデミー8部門、英国アカデミー6部門、ゴールデングローブ5部門にノミネート。また監督・脚本を手がけた映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15年)では、アカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞の作品賞にノミネート、全米製作者組合の最優秀作品賞を受賞。マッケイ自身も本作でアカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞の監督賞にノミネートされ、アカデミー賞、英国アカデミー賞、USCスクリプター賞で最優秀脚色賞を受賞した。
直近ではボー・バーナム監督の映画『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』(18年)などのコスチューム・デザインを担当。「Those People(原題)」(15年)、「The Strange Ones(原題)」(17年)などのコスチューム・デザイナーを務める。映画『ウォール・ストリート』(10年)、『ボーン・レガシー』(12年)、『アメイジング・スパイダーマン2』(14年)、『オーシャンズ8』(18年)、Netflix「マイヤーウィッツ家の人々」(17年)などのアソシエイト・コスチューム・デザイナーを手がける。
実際の事件に基づくクライム・エンターテインメント作品『ハスラーズ』は、ウォール街で働く男たちに対して形勢逆転を図ろうとする、女性ストリッパーたちを描いた作品だ。
ローリーン・スカファリア脚本・監督の本作は、ジェシカ・プレスラーによる「New York magazine」誌の記事“The Hustlers at Scores”にインスパイアされている。
ストーリーは、ユーモア、華やかさ、社会的な視点、チームとなって逆風に立ち向かう女性、という要素がミックスしている。脚本・監督のローリーン・スカファリアは語る。「この映画はダンサーの視点、クライム・ドラマ、ストリッパー映画、そして多くの人生を狂わせた経済の大混乱といった時代背景を織り交ぜた作品。ストリッパーという職業のせいで常に非難され続けてきた女性たち、また彼女たちの深すぎる友情が招く問題を取り上げたジェシカ・プレスラーの記事に強く惹かれたの」
プロデューサーのエルバウムは語る。「スカファリア監督自身がキャラクターたちをリスペクトしているからこそリアルに描けている。決して彼女たちを被害者扱いしたり、称えたりもしない。当時の世の中の情勢を理解することで、どのように彼女たちが生まれたのかを捉えている。」
スカファリア監督はキャラクターたちを家族のように感じていると言う。「彼女たちの経験すべてに共感できる。孤独との格闘や、自立を求める気持ち。母であり、友であり、姉妹であり、娘であり、立場の違いを超越する絆で彼女たちは繋がっている。」
コンスタンス・ウーは役作りのため、ストリップ業界の複数の女性たちと直接会って話し、彼女たちについて知ることに力を注いだ。ウーは語る。「デスティニーは幼い頃に母に捨てられたことから人を信じることができず、深い関係を築くことができない。だからこそ女友だちを求めるようになる。」
ジェニファー・ロペスは語る。「ラモーナには愛情はあるが、同時に複雑でどこか壊れている。彼女の野心が道徳観念を曇らせ、いつもギリギリのところで、周りの人たちが思い通りに動くように誘惑する。」
スカファリア監督は語る。「ラモーナは太陽のようにみんなを照らす存在。でも、太陽は同時に人を焼くこともできる。お母さん熊であると同時にゴードン・ゲッコー(映画『ウォール街』の主人公)でもある。その両面性が彼女をアンチヒーローにしている。」
ロペスもストリップクラブを何度も訪れ、ダンサーたちの話を聞いたと言う。「ポールダンシングの技術も含めてそこの空気のすべてをリアルに描きたかった。ほとんどのダンサーたちは実はただ自分自身と家族を養いたいだけ、日々の生活のために働いているだけだと知りました。彼女たちの問題は100%共感できるし、その事実をしっかりと伝えたかった。」
スカファリア監督は、「脚本を書き上げた瞬間からジェニファーの姿が浮かんでいて、彼女はラモーナを完璧に自分のものにしてくれた。」と語る。
キキ・パーマーは、自分が演じたメルセデスについて語る。「メルセデスは怖いもの知らずでユーモアがあるから好き。みんなのことを姉妹だと思っていて、一緒にいることで希望を抱いている。自分たちが置かれた立場をみんな理解していて、生き抜くためにできることをしているの。」
4人の中で最年少のアナベルを演じたリリ・ラインハートは語る。「純粋なのに刺激的で、少し無知なキャラクターを演じるのはとても楽しかった。彼女はとても弱っていて、ラモーナの母性に惹かれてすぐに仲間になったの。」
カーディ・Bが演じるダイヤモンドは少し先鋭的で毒舌で個性的だ。スカファリア監督はカーディ・Bのファンであり、『ハスラーズ』にどうしても彼女を出演させたかったと言う。「彼女は人としてもアーティストとしてもずば抜けていて、役に信憑性を持たせることができると思った。」
カーディ・Bにとってはこの企画にロペスとスカファリア監督がいたことが、プロジェクトに参加する決め手となったそうだ。
人気シンガーでありラッパーでフルート奏者、女優としても活躍するリゾは、本作のリズ役で長編映画デビューを果たした。「お尻を振って踊るのは大好きだし、ダンサーたちは地球上で最も強い女性だと思うし、(サイズの)大きな女性を代表することに意味があると思ったわ。」
スカファリア監督は語る。「リゾのためにこのキャラクターを作りました。彼女は非常に才能のあるパフォーマーでとても明るい存在なので、(劇中の)クラブシーンでもその明るさが欲しかったの」
トレイシー役のトレイス・リセットは、「トランスペアレント」でゴールデンタイムのTVシリーズに出演するトランスジェンダー女優として知られている。彼女は実際に8年間ニューヨークの某有名ストリップクラブで働いていた経験があり、『ハスラーズ』の企画を知ってすぐに行動したという。「私はストーリーとキャラクターにとても親しみを感じて、監督にストリッパーという職業を人間的に描いていることが嬉しいこと、ストリップダンサーとして働いていた経験を伝えました。本作のキャラクターたちは皆、自分と家族の生活のために必死に働いている。彼女たちの仲間意識はとても貴重で、生きるために必要なもの。多くの女性たちが共感できると思うわ。」
彼女たちが手の込んだ詐欺に手を染めた理由は、男性が支配する壊れたシステムの最下層に追いやられ、その状況から抜け出そうとしたからだ。誰もが自分と家族を養い、アメリカン・ドリームを掴もうとしている。それでも彼女たちの行為は犯罪であり許されるものではない。
彼女たちの行動について、ロペスは語る。「彼女たちはアンチヒーローであり、操作されたゲームを生き延びようとしたサバイバーです。2008年に国を危機に陥れた連中に復讐するために始めたはずだったのに、一度手を染めてしまうとやめるのがとても難しくなってしまった。」
劇中で示されるジェンダーへの見解について、印象深いセリフがあるとロペスは言う。「ほとんどの男が女に騙されたことを認めない。彼らのプライドが邪魔をして詐欺を通報できない。彼らは女のことを知ろうなどとは思っていない。ただ自分の理想の女を求めているだけ。まさか彼女たちが自分を騙せるなんて思ってもいない。彼らは妄想の世界で自分のことを無敵だと思っている。だから不意を突かれるのよ。」
スカファリア監督はダンサーだけでなく、詐欺被害者の男性たちにも同情すると言う。「何かひとつの職業やジェンダーを悪だと決めつけたくはありません。彼女たちはとても不利な立場だけれど、男性たちにも同情するところがある。ほとんどの場合、男性は富と権力で評価され、女性は容姿で評価される。すべてのジェンダーにとって、今の社会システムは壊れてしまっているの。」
役者にとってストリップダンサーを演じるためのハードルは沢山あったが、なかでも一番大変だったのがポールダンスだ。ダンサー役は全員ポールダンスのトレーニングが必須で、指導は元シルクドソレイユのパフォーマー、ジョアンナ・サパキーが担当した。「ポールダンスのトレーニングをしていて、人生で経験したことのないほどの筋肉痛を味わったわ。」とウーは言う。
普段から毎日ワークアウトをしているロペスでさえ、人生で一番大変だったと言う。「6カ月間この映画のためにトレーニングしました。持ち運びのできるポールをどこにでも持って行って、一度もレッスンをサボらなかった。今まで使ったことのない筋肉を使ったし、毎回アザだらけになった。肩と背中は未だに回復中よ!」
衣装デザインを担当したミッチェル・トラヴァーズは、「ダンサーとしての衣装は、女性が女性のために着る服ではなく、男の視線のために着る服を選んだわ。」と語る。
「ヘムラインだろうと胸の谷間だろうと、彼女たちは使えるものはなんでも使い、客の前ではそのスタイルを武器化する。アクション映画で男性が防弾チョッキや銃を装備するように、彼女たちの衣装はそれに相当する威力を持っているの。」
トラヴァーズは当時の流行りを調査し、それぞれのキャラクターに合ったスタイルを考えた。「ラモーナは成功者であり、参考にしたセレブは、2007年頃のジェニファー・ロペスだった」とトラヴァーズは笑いながら話す。「デスティニーのスタイルは、ティラ・テキーラ、ファーギー、アシュリー・シンプソン。メルセデスは完全にアシャンティと全盛期のビヨンセをイメージした。アナベルに関しては、まずは背景設定を考え、南部育ちで、注目されることが好きで、他のダンサーたちと仲良くできる彼女にはマイリー・サイラスを参考にしました。」
衣装、デザイン、時代背景も非常に重要な要素だが、本作で一番大切なのはやはり女性たちの繋がりだ。ウーは語る。「映画をご覧になったみなさんが彼女たちを気に入ってくれたら嬉しいです。彼女たちは完璧ではないけど、そこが良いと思う。不平等な世の中で、彼女たちなりのベストを尽くして生きているだけです。」
ロペスはこの映画にある大切なテーマについて語る。「すべての人間がリスペクトされるべきだし、思いやりをもって接してもらう権利がある。選んだ生き方だけで評価されるべきではありません。たとえそれが間違った選択だったとしても、誰もがハッスルしていて、駆け引きをしていて、必死に毎日を戦っています。女性は常に性的な目線で見られているけど、それを武器として稼ごうとすると途端に非難される。映画のなかでストリッパーはいつも使い捨てにされています。『ハスラーズ』はそうした女性たちの人生を深堀りし、彼女たちの良さ、悪さ、醜い部分まですべてを曝け出している。映画を観る人たちには、現実味のあるストーリーやキャラクターを楽しんでもらえると思います。」
スカファリア監督も語る。「観客のみなさんがこのストーリーを楽しんでくれることを願っています。私はこのキャラクターたちや当時の世界観をスクリーンに表現できたことが誇りであり、この映画が、特定の職業やそこで働く人たち、特に今まで過小評価されてきた人たちを理解することの大切さを広めてくれることを願っています。」